表現する喜び「気刊アンダーライン」編集に際して

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 「気刊アンダーライン」の編集を、ここ半年間ほど続けてきました。
 その中で、記事の題材をくれた多くの人々にお会いしました。

 まずは、なんとか記事を集めたいのでテーマを提供してくれないかとお願いした親友のふたり。
 ひとりは、彼が信仰している宗教の「証し」を書いてくれました。
 その文章の中には、「隣人愛」の大切さが書かれていました。
 自分の隣にいて、寂しさや苦しさに打ちひしがれている、隣人に寄り添いなさい、と。
 彼は優しい人で、人の宗教の有無に関わらず、そんな人がいたら、優しく朗らかに、寄り添う姿勢を貫いています。
 私は彼から、人と関わること、そして優しさを投げかけることが、人間関係の第一歩だということを学びました。

 そしてもう一人は、自分の過去の、なかなか破天荒なエピソードを書いてくれた友人です。
 その武勇伝は、一見かなりはちゃめちゃに見えて、本当の話なのかと、少々疑うほどです。
 しかし、私は彼に、そんなエピソードでも書いて欲しいとお願いしました。
 なぜなら彼は、ある大変な出来事で、愛する家族を多く失ってしまった人だったからです。
 絶望を味わった彼だからこそ、彼からにじみ出て来るエピソードを、どんな物でも書いて欲しかった。
 それで生まれたのが、あの、「師匠と自分の物語」の話でした。
 彼の、辛い過去があっても、今も真っ直ぐに毎日を過ごしている姿勢からも、私は学びました。

 そして最後のふたつの、戦中戦後体験。
 雑誌を作っていく過程で、私は初めから、しっかり社会問題も取り入れたいと思っていました。
 そこで私が大変お世話になっている方から、空襲体験のお話を知り合いから聞き取りをして、それを記事にしたいと、有難い申し出がありました。
 私は願ってもないことだと思いまして、空襲体験者からの聞き取りも含め、ご一緒してご協力しました。
 その際も、少々遠方にお住まいの、97才のおばあちゃんの元を何度か訪ね、ふたりでボイスレコーダーなどを使って聞き取りをし、文章を何度も練り直して、4ページにも及ぶ大作を作ることができました。
 97才のおばあちゃんに聞き取りをした際は、そのおばあちゃんはなんとも真摯な態度で私たちと接してくれて、その後出来上がった記事をラミネートにして持って行った際などは、大変喜んでくれたのを覚えています。
 もうひとつの、聞き取りをした方の隣に家に住んでいる方の空襲体験も、その内容はなんとも生々しいものでした。
 空襲体験と戦後体験、ふたつの記事は、文章をまとめていてやはり、戦争はあってはならないものだということを、改めて実感しました。

 それでも、皆さんから記事を提供していただいて、改めて分かったことがあります。
 自分の記事を作るということは、ある意味自分をさらけ出さなければいけないことに他なりません。
 なので、恥ずかしさや億劫さ、書いても良い物だろうかと、皆さん書く前はやはり書くことに躊躇されていたのですが、いざ書いてしまい、それが人の目に触れているのがわかると、それは喜びに変わっているようなのでした。
 空襲体験を書いたふたりのおばあちゃんなどは、自分の体験が雑誌に載って、泣いて喜んでくださいましたし、親友のふたりも、照れくさそうにはするのですが、また書きたいと言ってくれるのです。
そんな皆さんを見ていると、自己表現というのは、喜びにつながるのではないかと、つくづく感じてしまいます。
 皆さん本当は、世の中に、自分をわかってほしい気持ちがあるのです。
 でも、そんな機会は日常ではないに等しいので、自分をさらけ出せずにいる。
 そんな時、私が雑誌を作るから、記事を提供してほしいという機会ができて、ふと自己表現の機会ができる。
 そこで皆さん、自己表現に目覚めてしまったんですね。
 自分の記事を書いた皆さんは、照れくさそうにしていながら、なんとも清々しい表情をしておられました。

 振り返って昨今、電車の中で凶悪な犯行に及ぶなど、信じられないような事件が多発しています。
 その中の犯行に及んだ人のひとりが、自分が世の中に相手にされていない、ということを、ニュースで聞いたような気がします。
 そんな話を聞くと、皆さん本当は自分のことを世の中に訴えたい、知ってもらいたいのだなと、やはりわかるような気がします。
 だからこそ、市井(しせい)の人、底辺の人、一般大衆の想いを汲み取りたい、そんな想いで、今回雑誌を作り続けました。
 これからもそうやって、ひとりひとりの隠された想いに寄り添う雑誌でありたいと、思います。

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代表プロフィール

青森市でパソコン関係全般の自営業をしております。
多くの人々の数多くのパソコンのお悩みを聞き続け、ほぼすべて解決に導きました。
これからの時代、ITの表現が重要になると確信し、その一歩として雑誌「気刊アンダーライン」を刊行致しました。
快活一番。誰にでも同じ目線で誠実に向かうことをモットーにしています。

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